「短刀と弓」(日韓関係論)翻訳48 8章ー⑥ 韓流(ハンリュウ)と寒流(ハンリュウ) ()は訳者注

 韓流ブームがこのまま続けば韓日関係の発展にも大きな助けになるだろうことは二言する必要もない。
NHK放送文化研究所が2004年9月全国の2200名を対象に調査した結果、応答者(1289名)の38%が「冬の恋歌」を視聴し、視聴した人たちの半分ほどが韓国文化にもっと触れようと考えていると答えた。
視聴した人たちの26%は韓国に対する見方が変わったと答えた。

 それから3か月後に実施された朝日新聞の世論調査(2004年、12,21)でも似た結果が出た。
即ち韓国ドラマの人気が高くなるにしたがって、我が国の人や文化を以前より親しく感じるようになったという人が約3割(29%)に達し、20~40代女性の間では、その比率が4割に跳ね上がった。

 MBCと日本のFNN(フジニュースネットワーク)の共同世論調査(2005,1,4)によると、韓流ブームが韓日関係を改善するのに役立つだろうと答えた人が韓日両国で各々8割台に接近した。
しかし、韓国人の62,9%は日本をパートナー(29,2%)ではなくライバルと見なした。
反対に日本人の56,1%が私たちをライバル(23,2%)であるよりもパートナーとして考えていると回答した。
参考に韓国人の54,1%、日本人の78,2%は韓日関係が今良好な状態だと回答した(日本内閣府が2004年10月に調査したところによれば55,5%)。

 韓国人に対するイメージも大きく変わっている。
日本内閣府が2004年10月7日から17日まで男女3千名を対象に外交に関する世論調査を行った結果に対して親密感を感じたと応答した比率が3年連続最高記録を更新した(56,7%)。
また親密感を感じないと答えた比率も39,2%で歴代最低値を記録した。

 1951年に実施された「東京小市民の異民族に対する態度」と言う世論調査で一番嫌いな国の人がソ連人ではなく朝鮮人だったことを考えると今昔の感がする調査結果だ。
また、1977年に地方の高校生を対象に実施された世論調査によれば朝鮮人のイメージは「暗い、陰気だ、下劣だ、汚い、田舎臭い、怖い、頭が悪い、遅れている、野蛮だ、非文明圏だ。」という返答が主流を成した。ヨン様のようにもの柔らかい、上品で包容力があり、謙遜しながら知的で誠実な男は目を洗って探しても見つからないとため息をついている最近の日本女性の嘆きを聞いている間に、大きな地殻変動が起こって昔の日本列島は沈没し新しい日本列島が突然わき出た錯覚さえ覚える。

 朝日新聞のコラムニスト、船橋洋一は時事週刊誌《アエラ》の「ペヨンジュンに学ぶ韓国」と言う特集号(2004、1,5)で『文化フュージョンの未来にアジアの共同体が見える。』という趣旨の文を寄稿した。
韓流ブームの影響で韓日関係がもっと発展すれば中国を含めたアジア共同体の誕生を早めるだろうと展望した。

 明らかにいま日本で起こっている韓流ブームは徳川幕府末期に形成された皇国史観(日本は万世一系の現人神である天皇が永遠に君臨する神国であるという歴史観)や明治以降継承されている「文明国日本が野蛮国朝鮮を開化しなければならない。」という蔑韓論的視角で見れば想像もできない事態だ。
そんな点で韓流ブームは日本人がわが国を半開、遅鈍、野蛮国ではなく文明国それも自分たちと同等の水準の文明国として認知し始めたという印でもありうる。
前に紹介したフジニュースネットワークで56.1%が韓国をライバルではなくパートナーとして考えているという返答をしたこともそのような解釈を裏付けてくれる。

 また、今の韓流ブームは日本の韓国に対する認識が100年余りの月日を経て、征韓論から帯韓論へ変わってきているという兆候であるかもしれない。
日本がわが国と自由貿易協定を締結しようと急いでいることがいい例だ

 しかし過去の歴史を振り返ってみれば、日本は便宜によって征韓論(壬申倭乱、日帝の植民統治)と帯韓論(三韓との交流、朝鮮通信使歓待)を使いこなして我々を苦しめてきた国だ。
そんな点で韓流ブームが蔑韓論と征韓論の終息を予感させる現象だと拡大解釈するのはまだ禁物だ。
さらに韓日新時代が開かれるだろうという期待はもっと禁物だ。

 例えば、ペヨンジュンが二度目に日本に入国して滞在して帰った2004年11月29日、日本の最高裁判所は第二次世界大戦当時日帝によって強制的に引っ張られて行った韓国人犠牲者と従軍慰安婦、そしてその遺族35名が日本政府を相手に1991年に提起した賠償請求訴訟を棄却した。
13年間引きずった戦後補償訴訟に日本の最高司法機関が最終的に「NO」と返答したのだ。

また、その一日後である11月30日、最高裁判所は、光復に合わせて帰国の途にあった朝鮮人5千人余りを乗せた浮島丸が昔の日本海軍による意図的に爆破された事件で、死亡した韓国人遺族と生存者たちが1992年に提起した公式謝罪と賠償請求訴訟を棄却した。
これをもって浮島丸と共に京都舞鶴港に水葬された朝鮮人労働者550余名とその遺族が恨みを晴らす道が永久に絶たれた。

 これは韓流ブームを一瞬のうちに冷却させることができる大きな寒流(韓流と同じ音;訳者注)前線が今も日本列島の上空を覆っているという確かな証拠だ。

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