今までは日本が「帝国主義」に転換し韓半島に対して3回目の示威行動を行う可能性を探求してきた。
そうなると日本がこれからも引き続き「小国主義」を堅持して本来の姿である海洋国家として残される可能性はないのだろうか?
松村劭が書いた《海から見た日本の防衛》(PHP新書、2003)によれば海洋国家日本の陸軍は原則的に海兵隊のように「攻めて、引く」作戦を主目的にしなければならない。
それにもかかわらず、日本はイムジン倭乱や中国侵略の時のように大陸に進出して奥深く入っていき駐屯する失敗を繰り返した。
また、日本が海洋国家だという本分を忘れて大陸国家ドイツと同盟を結び、同じ海洋国家であるアメリカ、イギリスと戦争を始めたことも誤りだった。
大陸国家と海洋国家の同盟である「日本、ドイツ、イタリア同盟」よりは海洋国家と海洋国家の同盟である「アメリカ、イギリス、日本同盟」が日本の国益にもっと合致したという話だ。
こんな反省によって日本はこれから韓半島に干渉や進出をできる限り回避しようという主張が提起されている。
例えば評論家屋山太郎は少し前「日本外交を海洋国家連合に転換せよ」と催促した(産経新聞、『正論』、2005,5,23)。
『建国(668年)以来日本は中華圏と正式外交を断絶したおかげで1871年日清修好条規を締結した時まで1200年間ほど平穏無事な時代を構築することができた。
また、福沢諭吉は1885年時事新報に《脱亜論》を発表して、「中国、朝鮮と付き合えば破滅する。」と声を張り上げた。
中国に天子だと書き記した国書を送ったという聖徳太子と脱亜論を主張した福沢諭吉の興奮を考えると日本外交の解決策は一つしかない。
即ち日本、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、インド等5カ国を核としたアセアンを引き入れて「海洋国家連合」を組織するのだ。
中華圏とは当分の間、隣と付き合う程度の付き合いにして距離を保つのがよい。』
日本の現在の人口は世界第7位である1億3千万名だ。
しかし、出生率が低くいわゆる「少子化」現象で2040年には総人口が1億人を下回り2065年には7千万人、2085年には5千万人そして100年後である2100年には4千万人に減る可能性がある(手塚和彰、《怠け者の日本人とドイツ人》、中公新書、2004)。
いやもっと減る可能性もある。
厚生労働省が発表した「合計特殊出生率」即ち一人の女性が一生に出産する子供の数が1.29人と発表された。
これは、2002年に国立社会保障研究人口問題研究所が予測した2004年度予想値1.32人を大きく下回っていることで、予想よりはるかに速い速度で出生率が低下しているのだ。
2100年に4千万の人口は明治維新直後の人口に相当する。
当初人口問題研究所は合計特殊出生率が2000年に1.30まで低下した後、2050年には1.39に回復すると予測した。
ところが2004年にすでに1.30台を割ったという事実は100年後日本の人口が明治維新直後あるいはそれ以前に戻っていくこともあるということを示唆している。
このような人口統計の展望が正確ならば、日本がいわゆる「北方三角同盟」に挑戦する可能性、即ち韓半島を侵略して中国、ロシアと衝突する可能性は大幅に低くなる。
なぜならば人口が4千万に減れば日本列島を耕作して管理する場合も手に負えないだろう。
人口が1億に肉薄すると見るから「狭苦しい島国」だとか「島国根性」などという言葉が生じて海外進出の野心が芽生えるのだろう。
日本列島の中で仲睦まじく暮らしていくのに十分な人口ならば努力して海外に進出する必要がないだろう。
日本の経済力も下降の趨勢だ。
バブル経済が全盛期の時だけ経済専門家は口さえ開けば「21世紀はパクスジャポニカ―ナ(日本がリードする平和の時代;訳者注)の時代」即ち日本の経済力が世界を支配する世紀になるだろうと騒ぎ立てた。
ある評論家がもう少し浮かれて「21世紀に入れば1億3千万がヨーロッパの貴族のようにぜいたくな生活を楽しむようになる。」と大言壮語した。即ち海外投資資産から稼ぎ出した利得だけでも仕事をせずにヨーロッパの貴族のように生活を楽しめるという夢のような話だ。
しかし、《日はまた沈む(The Sun Also Sets)》[Simon & Schuster,1989,日本語翻訳名は《日はまた沈む》(思想社、1990)]の著者、ビル.エモット(Bill Emmott)の言葉を借りなくても、日本の繁栄はエモットの指摘のように今、生産大国から消費大国の国へ変貌を遂げている途中だ。
[エモットは2006年2月《日はまた昇る》を出刊して日本の復活を宣言した。日本版は《日はまた昇る》(草思社、2006)]
日本人たちが「ウサギの家に住んでいる仕事中毒患者」という皮肉を聞いたことも今や遠い昔の思い出だ。
今日本の若者たちは勤勉よりも快楽をもっと重要な生きることの価値として考えている。
決まった仕事もなく、ぶらぶら遊びながら父母に寄生しようという「パラサイト(parasite)シングル」族やアルバイトで生活を立てているいわゆる「フリーター(フリーアルバイト)」族が急激に増えていることがその証拠だ。
MITのレスターサロー(Lester C .Thurow)教授は《大接戦(Heard TO HEAD)》(講談社、1992)という本の中で21世紀経済戦争での勝者はアメリカでも日本でもないヨーロッパ連合(EU)であると予見した。市場の規模が経済戦争の勝敗を左右するとすれば、3億8千万の巨大内需市場を持っているヨーロッパ連合が一番有利だというのだ。
勿論この本は十数年前に出版されたもので、少し前フランス、オランダ、などがヨーロッパ憲法案を否決させ、「ヨーロッパ合衆国」の結成計画は大きな失敗をもたらすことになった。
しかし、2004年に東欧圏10カ国が加盟し会員国が25カ国に増えていつかは政治統合が成り立つと予想すればまだその可能性は残っている。
もしヨーロッパ連合が21世紀経済戦争の覇権競争から脱落すれば有力な候補はアメリカでも日本でもない13億の内需市場を持っている中国だ。
現在1億3千万の内需市場を持っている日本は現在の低い出生率を勘案すれば21世紀末には4千万市場に縮小する。
そうなれば日本企業はアジア市場でも経済力を喪失して退出するだろう。
ノーベル経済学賞受賞がが有力な経済学者として注目されている森嶋通夫(2004年没;訳者注)前大阪大学名誉教授も「日本が遠くないうちに東アジア共同体構築に失敗すれば21世紀中盤に没落する危険性がある。」と予見した。
森嶋が挙げている没落理由は「人口減少化と質的低下、教育の荒廃、使命感のあるエリート層の不在、無宗教とイデオロギーの欠如、世代間の思想的分裂、職業倫理の荒廃」などだ。
このような経済地盤沈下を挽回するため日本は今アジア太平洋地域の国々と自由貿易協定を締結することに熱心だ。
シンガポール(2002,11)、メキシコ(2005,4)と自由貿易協定を締結し稼働中であるし、フィリピンとマレーシアも協定を締結することに正式同意した状態だ。
タイとも協定締結を最終合意し、アセアンとは2007年まで合意を導き出す予定だ。
韓国とは遅かれ早かれ交渉を完了する方針であり、中国を網羅したアジア経済共同体構築が日本の最終目標だ。
経済共同体建設を推進しようという日本の戦略は今までの経済優先政策即ち「小国主義」と脈絡を同じにすることだ。
随って日本は経済的理由でこれからも小国主義を堅持するしかないだろうという展望も優勢だ。
しかし、しばしば強調してきたように日本は劇場国家だ。
大国主義が台頭すれば大国主義に熱狂し、小国主義が台頭すれば小国主義に忠実なことが日本人の生理だ。
では我々はどのようにすべきだろうか?
北方三角同盟を注視という主張は「日本はない。」という論理と類似している。「日本はない。」と主張する論者達が過去に北方三角同盟、特に中国との同盟を注視したために我々は二度にまたがって民族大受難を経験した。
北方三角同盟(中朝韓;訳者注)論者達も日本がないという論者達も勢力を得れば我々は日本列島から飛んでくる3回目の火を自ら招く可能性もある。
半面、南方三角同盟(日米韓;訳者注)を注視しようという論者達の大前提は「日本がある」(アメリカがある)」ということだ。
我々は大陸国家と海洋国家の特徴をすべて持っている半島国家だ。
それにもかかわらず、海洋国家の特徴を捨てて大陸国家という側面だけに固執すれば我々はまた再び停滞の沼にはまり込むだろうと彼らは主張する。
しかし、南方三角同盟、北方三角同盟、同じように二分法的思考をすれば韓半島の状況は130年前の状態に戻る危険性が大きい。
そのために大陸国家と海洋国家との交流を同じ様に注視することが最善の方策だ。これが半島国家の宿命だ。
かつて、申叔舟は「倭の動向を注視せよ。友好親善を終わらせることなかれ。」という極めて大切な遺言を残した。
日本がよかろうと悪かろうと、日本が大国主義を歩もうと小国主義を歩もうと「倭との親善を終わらせることなく、動向を鋭意注視せよ。」という申叔舟の遺言を忠実に守ることがこの時代の使命ではなかろうか。
ーーーーーーーーーーーーーー 完 ーーーーーーーーーーーーーーー
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