「短刀と弓」(日韓関係論)翻訳46 8章―④ 嫌韓勢力の反撃

 日本の韓流ブームは新興宗教ブームを引き抜いて型で押したようだ。「ヨンプルエンザ(ヨン様とインフルエンザの合成語)」にかかって「ヨン様教」に入信した信徒たちを日本では「ソナチアン」と呼んだ。 
「ソナチアン」達は教主ヨン様の写真を居間にかけておいて目礼をして一日を始める。
会社に出勤したり退勤したりするとき「冬ソナ」の主題歌が耳に入れば、我知らず足が止まり、自然現象で目には涙が流れ落ちる。
帰宅するとヨン様に関係のある話題を隅々まで探して、寝る前には冬ソナをかけておかなければ寝られない。
そうして夜明けを迎えることも1回や2回ではない。

 熱烈なソナチアン家族は外食に行っても、必ず待機者名簿の4列目に名前を書いておく。
そうして従業員が四様と呼んでくれる時までじっと待つ。
ヨン様の「ヨン」が四という数字を意味するからだ。「三.五様」という言葉も広く流行している。
ヨン様のファッションとヘアスタイルをまねようとする若い男性を指す言葉だ。
即ち、いくらヨン様をまねしてもあなたは「四様」にはなれなくて、「三.五様」に過ぎないという皮肉だ。

 こんなソナチアンの悲喜狂想曲を韓国ならば匂いを嗅ぐのも嫌だという嫌韓勢力はうれしがるはずは決してない。
新しい歴史の会の新しい会長として就任した八木秀次は月刊誌《正論》で「冬ソナブームによって自民党が参議院選挙で票を大きく失った。」と主張した。(2004,9月号)

 事情はと言えば、ペヨンジュンが日本を訪問して大きな旋風を巻き起こし、NHKが冬ソナを再々放送することによって、愛嬌がなく無表情だと評価されていた民主党の岡田代表が主人公ミニョンの誠実な態度とオーバーラップして7月に行われた参議院選挙で女性票をかき集めた。
反面、小泉総理は「人生いろいろ、職業もいろいろ」という国会答弁で不誠実という印象を与えて、女性票を大きく失ってしまったのだ。

 参考に、2005年9月衆議院総選挙の時はぺヨンジュンが訪日して空前の3次ヨン様ブームを起こしたが、逆に自民党が圧勝を取り込んだ。
自民党の勝因として58%が小泉総理の人気を挙げた。
反面民主党の敗因として24%が岡田代表の無表情を挙げた。

 そう言いながら八木はペヨンジュンが「日本から受けた植民地支配をすべて昔の事だと心に刻むにはあまりのも傷が深いと考え、独島暴言には腹が立った。」と言ったと親切に(?)ヨン様語録まで紹介した。
彼がこうしてまでコラム末尾にわざわざペヨンジュンの「反日語録」を紹介していることを見ると彼には昨今のヨン様ブームと韓流ブームが恥辱的な現象であるのだ。
武士と群衆が朝鮮通信使宿舎を訪ねて文字や絵を描いてくれと頼んだ300年前の「群倭現象」が再び日本列島に」出現したためだ。
韓流ブームが拡散されれば自分たちが取り組んでいる嫌韓キャンペーンがさらに食われてしまうのではないかという焦りもあるのだろう。

 極右女性ジャーナリスト、櫻井よしこはヨン様ブームを日本軍国主義の高揚に利用した。
「私たちが『冬ソナ』から心しなければならないのはそのように柔らかい顔のヨン様も兵役で鍛錬された健康な肉体を持っていると言う事だ。
それは韓国で台頭している新しい指導層が脆弱な左翼思想から脱皮しようと堅実な現実感覚をもっていると思わせてくれる。
彼らは日本に憲法改正と軍事力の充実を要求している。
我々はそんな要求には応じないと同時に総理以下全員が靖国神社に参拝し、一時の反発に恐れることなく参拝意義を詳しく説明しなければならない。
そんな日本と日本人を韓国人は必ず喜んで見守るだろう。」(《文芸春秋》、2005,3月号)
ヨン様のような韓国人が日本の憲法改正と軍事力の充実を要求しているって!とんでもない話だ。

 ジャーナリスト西村幸祐は《正論》(2004年、9月号)で冬ソナブームは2005年「日韓友情の年」の雰囲気を醸成するためにNHKと日本最大の広告会社、電通が意図的に演出した現象だと主張した。
西村はその証拠として日韓友情の年2005年実行委員会に広告会社電通の成田会長が副会長として、NHK 韓国語講座講師を担当している小倉紀蔵助教授が実行委員として委嘱されたという点を挙げた。

 NHKが意図的に韓流ブームを演出したという話が出るほど韓流ブームは逆境にあったNHKを生き返らせてくれた救世主と言っても間違いない。
即ち、NHKは受診料納付拒否運動で2004年受信料収入が68億円ほど減少した。
しかし、韓流関連の書籍、DVD販売等の副収入として84億5千万円を取り込み、全体収入の減少幅を最小限にすることができた。
参考に2004年度の副収入はその前の年より25億円ほど増加した金額だ。大部分は韓流と関連しており、収入が増加したのだ。
日本語で「ヨン様,様様」だ。即ち「ヨン様最高」だ。
2005年も続いて、決算では「テチャングム」の人気にもかかわらず、経常事業収入は去年と比べ、146億円が減少した7471億円に留まった。
受信料納付拒否運動が激しくなった所に韓国ドラマ関連の売り出し額が前年度に比べて55億円ほど減少したためだ。

 インターネットでも韓流ブームを嫌ってけなす攻撃が過熱してきた。
韓流攻撃の急先鋒「STOP THE 韓流、NO MORE KOREAN BOOM」(http://antikorea.hp.infoseek.co.jp)というブログによれば、ブログ開設以後一日の接続者数が数千件に達したという。
このブログは韓流ブームというのはマスコミがつくったものだから一日も早く収束させようという趣旨から開設された。
ひと月の間、接続件数が数万件に達する程度に巨大な「アンチ韓流ソサエティー」が形成されたわけだ。

 その延長戦上で2005年8月《嫌韓流》という漫画まで出版された。
この漫画によると「嫌韓流」は「マスコミが人目に付かないようにやっているもう一つの韓流」だ。
即ち韓流はマスコミが意図的に演出したブームであり、水面下では韓国を嫌っている日本人が急増しているというのだ。

 この漫画の作者は30代後半の男性であることが知られている。
しかし、「韓国人に傷つけられたワールドカップサッカーの歴史」、「日本文化をかすめ取った韓国」等に関する是非だけでなく、戦後補償問題、ハングルの歴史、韓日併合問題、独島侵略問題等を羅列していることを見ると、その背後に巨大な嫌韓勢力の陰謀が隠れていることを推測することができる。

 もう一度言うと、この漫画に新しい歴史の会の前会長西尾幹二、ジャーナリスト西村幸祐、嫌韓流たちの代弁者である民族学者大月隆寛らが別途にコラムを起稿している事実はこの漫画が韓流ブームに冷たい水を振りかけようとする嫌韓勢力のけしかけと扇動を受けて出版されたことは動かすことのできない証拠だ。

2005年8月出版されるとすぐにベストセラーになった漫画《嫌韓流》の表紙

 冬ソナブームを肯定的に評価する韓流専門家の間でも「ほめ殺し(持ち上げるふりをして相手の面目をつぶす態度)」の刃がぴかっと光る。
例えば、彼らが「冬の恋歌」のストーリーが敗戦直後である1947年NHKラジオが連続劇として放送した「君の名は」と似ているという話をよく噂した。
この連続劇は純愛ドラマとして放送日には町の風呂屋の女湯がガラガラにすいたほどに大変な人気を集めた。
また、「冬の恋歌」のストーリーが数十年前に流行した少女漫画を連想させると指摘する専門家も多い。     

 とにかく冬ソナブームを分析する韓流専門家たちに共通するキーワードは「数十年前の日本」だ。
筆者はこのような言葉を聞くたびに慶応大学の創立者福沢諭吉が金玉均らから初めて朝鮮の事情を聞いて朝鮮が30年前の徳川幕府末期の時ととても似ていると同情を装ったが、結局朝鮮を日本化しなければならないと主張した歴史が浮かび上がる。

 「韓国が2,30年前の日本と似ている。」と言う話は筆者が初めて日本に来た時も耳がすり減るほど聞いた話だ。
この話は日本語が未熟な人が聞いた時は我が国を称賛するように錯覚するかもしれない。
しかし、それは相手方を持ち上げるふりをして逆に面目をつぶすほめごろしであるにすぎない。
「『冬ソナ』を見れば30年前の日本の面影を連想させる。」という韓流専門家たちの言葉も一種のほめごろしだ。
「冬ソナ」を持ち上げるようでも結局韓国ドラマは日本に30年ほど遅れているという韓国蔑視の発想が隠れているということだ。

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