島根県議会が竹島の日を制定した問題で韓国言論は第2の韓国簒奪、韓国の光復を否定する行為だと連日特筆大書するころ、日本言論は竹島問題よりはライブドアという新興企業が日本放送とフジテレビに株式を買収するという騒動を集中報道していた。
それもそうだろうが、当時だけでも大部分の日本人は竹島がどこに位置する島なのかよく知らない。
竹島問題に関心と興味を持っている人は独島周辺の漁業問題がかかっている島根県隠岐の島の住民とか右翼勢力に過ぎなかった。
当時あるテレビの世論調査でも約半分ぐらいが日本の領土なのか韓国の領土なのか分からないと回答し、その内3%は韓国の領土だと回答した。
しかし、今後状況は大きく変わるだろう。
2005年度検定を通過した日本の中学校教科書の中で竹島問題を取り扱う教科書が大きく増え、またもっと増える見通しだからだ。
ちなみに、2005年度検定を通過した6か所の地理教科書中2か所、8か所の公民教科書中3か所の教科書が竹島を日本の領土だと説明し、地図上に日本の領土と表記している。
現在の教科書市場占有率で見る時、2006年度からは全体中学生の7割以上が北韓領土、尖閣諸島に続いて竹島も日本固有の領土だという洗脳教育を受けることになるだろう。
日本の言論も独島領有権問題を国際司法裁判所に回付(書類等を渡し回すこと;訳者注)して解決しようという日本政府の従来の主張を支持する論調で一貫している。
しかし一度考えてみよう。
もし我が国政府が正式に対馬に対して領有権を主張して国際司法裁判所に回付して結論を出そうと要求すれば日本政府が応ずるだろうか?
また、北海道のアイヌ族や沖縄独立派グループが島の独立問題を国際司法裁判所に回付して結論を出そうとすれば日本政府が応ずるだろうか?
とんでもございません。
自分の固有の領土にだれが是非を訴えたとしても、いちいち国際司法裁判所に裁定を一任する国がどこにあるだろうか?
ノ大統領の話のように(2004年1月年頭会見)「自分の妻をしきりに私の妻だ、私の妻だと強調すること」と異なることのない愚かなことだ。
「大きな決心をして、竹島を韓国に譲渡しよう」というコラムを起稿した朝日新聞の若宮啓文論説主幹のように日本の良心勢力が前面に登場しなくては独島問題が解決される見通しは立たない。
しかしそんな良心勢力が存在するとしてもその勢力は微々たるものだ。
勿論、秀吉が2回にわたって朝鮮を侵略する時も藤原惺窩(1561~1619)、沙也可のような良心勢力はいた。
藤原は捕虜として捕まえられてきた儒学者姜ハンに朱子学を学んだ後、姜沆(カンハン)に「秀吉が支配する日本は礼儀作法も知らない野蛮国だ。どうか朱子学が発達した文明国朝鮮と明国が力を合わせ 日本を討伐してくれ」とたのんだ。
ちなみに藤原と姜沆は2005年度検定を通過した8冊の中学校歴史教科書の中で唯一「教育出版」の人物コラムに登場している。
加藤清正(1952~1611)の武将として朝鮮に上陸した沙也可は日本軍の野蛮行為に憤激して部下たちを連れて朝鮮に投降した。
沙也可はその後、金忠善という名前と官職を付与されて慶尚北道タルソン郡ウロク洞に定着した。
ウロク洞には14代当主金在錫氏以下50世帯(200名)、全国には2千世帯(7千名)が暮らしている。
また、2005年度検定を通過した中学校歴史教科書には朝鮮の陶磁器を日本に紹介した柳宗悦(1889~1961)が8か所中3か所の人物コラムに、江戸時代に朝鮮との善隣友好を強調した雨森芳洲が2か所の人物コラムに登場した。
今はどうか?内藤正中、島根大学名誉教授は《世界》2005年6月号に独島が日本の固有の領土だという主張は虚構という文を寄稿した。
内藤名誉教授の文を読みながら、筆者は京都大学の堀和生教授が《朝鮮史研究会論文集》(<1905年日本の竹島編入>1987)に独島は韓国固有の領土だと指摘した論文を発表したという知らせを聞いて1990年代中盤京都大学に訪ねて行った記憶が思い出された。
日本外務省は1952年、李承晩ラインが宣布されるとこれに反駁する歴史的、学問的根拠を準備するため研究官川上健三に論文作成を依頼した。外務省官僚たちは独島問題が飛び出したら、川上が1966年に作成した<竹島の歴史地理学的研究>を野戦教範(方式)で仕掛け、韓国側に文句を言いたてていることが知れた。
堀教授は川上の論文を読んでみて、学者的野心からその論文が 歴史的学問的価値がないという事実を広く知らせるために1987年30ページほどの論文を発表した。
論文の要旨は「独島が文献に登場するのは朝鮮が日本より200年早い。明治政府の太政官(今の内閣)も朝鮮の領土だと認定した。日露戦争時の軍事的野心が日本の竹島編入をけしかけた。」というのだ。
堀教授によれば、日本国内の多数意見は「近世初期から一貫して日本の領土だったために1905年の閣議決定はそれを再確認したに過ぎない。」というのだ。
少数意見は「1905年時点で竹島は無地主状態だったためにそれを占有するだけ。」と主張する。
堀教授は、しかし明治政府の最高官庁である太政官が1877年竹島を日本の版図外だと正式に認定したという事実、朝鮮は15世紀から独島に対する領有意識を持っていたという事実、朝鮮は日本の編入事実を知って即刻反対意思を表明したという事実、竹島編入が朝鮮に対する主権侵害と侵略の性格を持った簒奪だったという事実等を指摘し、日本国内の多数意見と少数意見がすべて政治的に脚色されたことだと論文末尾で強調した。
筆者は堀教授に会ってこのような論文を発表した理由は何か聞いたところ「学者としての良心で川上論文に反駁するため執筆しただけ」と答えた。
そうしながらも「私は政治家でもなく評論家でもないからインタビューに応じられない。」と固く拒否した。
もっともその時は自民党幹部会と右翼勢力が「朝鮮を心の祖国」だと考えたという藤原惺窩を「売国奴第1号」と名指し、独島を韓国に譲渡すれば我々も後世に売国奴と指弾されることになるから、強硬に対応しなければと気炎を吐いた時期だった。
堀教授が前面に進み出ることを躊躇うことも無理からぬことだ。
韓日友好派はどんな視点なのか?独島切手を発行した問題で騒がしい時、慶応大学の小此木教授は朝日新聞(2004,10,22)に次のような文を寄稿した。
「竹島問題は日韓どちらがまず島を認知し利用、占有したのかに関する歴史的、法的問題であるために国際司法裁判所等で司法的に解決することが望ましい。
ワールドカップを共同開催した二国が感情的に対立することも嘆かわしいことだ。
近い将来、自由貿易協定が締結されて国境を認識せずに人や物資が往来する時代が来れば、韓国側も暗礁を占拠している愚かさに目覚めるだろう。」
朝日新聞の若宮啓文論説主幹は「竹島と独島」(2005,3,27)というコラムで「日本は大きな心で独島を韓国に譲渡し、韓国は独島を友情島と命名すればどうだろう?」と提案した。
韓国はその代わりに独島周辺の日本漁業権を期限なしで認定し、ほかの領土問題について日本を支持することを約束しなければならないと注文した。
若宮主幹はしかし日本がそんな大きい度量を施す国でもないため自分の提案は結局夢想に終わることになるだろうと自嘲した。
ちなみに若宮論説主幹も延世大語学堂に一年間留学した(1981年)知韓派だ。
夢のような話だが、若宮論説主幹のような韓日友好派や良心勢力が前面に登場し我々に独島を譲渡しようという世論を形成すると見なそう。
そうすれば右翼勢力が反抗して彼らを売国奴と罵倒し、テロの危険を加えるようになるだろう。
実際に若宮論説主幹は反朝日媒体から一斉に「売国奴」という集中攻撃を受けた。
これが現在日本の水準即ち民度だ。
竹島問題は「冬の恋歌」ブームや自由貿易協定締結のように韓日両国がみな一緒に得をするプラス島ゲームではない。
一方が徳をすれば必ずもう一方が損をするいわゆるマイナス島ゲームの性格を帯びる。
だから、「島国国民」ではなく、「地球市民」という認識が日本列島に広がらない限りゲーム終了の鐘はなかなかならないのだ。
ここまで読んできた読者諸君の中には日本の右翼勢力と良心勢力を区分する方法が未だに終わっていないと」筆者を叱咤する人もいるだろう。
日本のすべての階層が「ファシズムの基盤」を再形成する可能性があると指摘しているためだ。
職業だけで色彩を判読できなければ他に方法はないのか?
そうならば筆者が開発した一つの方法を紹介してみよう。
出会った日本人にこっそりとこのように聞いてみた。
「日本の新聞を購読しようと思うが何新聞がいいですか?」
韓国で会った日本人なら「日本では何新聞がいいですか?」と聞いた。
答えは朝日、毎日新聞等ならある程度過去史を反省することを知っている人であろう。
反面、読売、産経新聞を紹介すれば一旦警戒するとよい。特に産経新聞の愛読者ならもっとそうだ。
進歩的文化人の会メンバー
名前 出生年度 職業・活動
井上 ひさし 1934 小説家・劇作家・日本ペンクラブ会長梅原 猛 1935 哲学者・古代史、《万葉集》研究で構 築した梅原日本学で有名
大江 健三郎 1935 民衆の歴史力を駆使した小説などでノ ーベル文学賞受賞
奥平 康弘 1925 表現の自由研究第一人者、東京大学名誉教授
小田 実 1932 光州民主化運動告発、ベトナム反戦運動等を繰り広げてきた作家(夫人が済州島出身在日同胞)
加藤 周一 1919 医者出身文芸評論家
沢地 久枝 1930 戦争による女性の悲劇を発掘、告発している女性作家
鶴見 俊輔 1922 思想の科学主導、哲学者
三木 睦子 1917 アジア婦人友好会長(三木武夫前総理夫人)
注;9条の会は憲法改正に反対するために2004年6月に設立された団体で、賛同会員約900名。全国の職場、地域支部は約3千か所。9条の会は全国各地で大規模な講演会を開いているが、主要なマスコミは全く報道していない。9条の会ホームページ住所はwww.9-jo.jp/
扶桑社版教科書採択反対運動を開いている団体及び市民グループ
団体名 ホームページ
こどもと教科書ネット21 ※www.ne.jp/asahi/kyokasyo/net21/
(事務局長俵義文の個人ホームペーwww.ne.jp/asahi/tawara/goma)
歴史教育アジアネットワークJapan www.jca.apc.org/asia-net/
ピースボート www.peaceboat.org/
戦争と女性に対する暴力日本ネットワーク www.jca.apc.org/vaww-net-japan
平和フォーラム www.peace-forum.com
歴史教育者協議会 www.jca.apc.org/rekkyo/
日本民主法律家協会 www.jdla.jp/
日本教職員組合 www.jtu-net.or.jp
全日本教職員組合 www.zenkyo.org/
在日コリアン青年連合 www.key-j.org/
※教科書ネット21;家永三郎教科書裁判支援会の流れを継いで1998年6月に結成された団体。韓国の「アジアの平和と歴史教育連帯」傘下「日本の教科書を正す運動本部」と連帯して扶桑社版歴史教科書採択を阻止する運動を主導している。
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